Appleはデジタルヘルスへ事業拡大! iWatchは他社ウエアラブルと共棲路線か?

July 23rd, 2014

Appleは、2014年6月、「HealthKit」を発表した。今回の発表を検証すると、Appleのウエアラブル戦略が読み取れる。AppleはHealthKitと、期待が高まるiWatchで、デジタルヘルス事業構築に向けて走り出した。

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デジタルヘルス事業の骨格

AppleはWorldwide Developers Conference (WWDC) で次期基本ソフトiOS 8を発表。多くの新機能が登場したが、AppleはHealthKitを発表し、デジタルヘルス事業の骨格を示した。Appleは既に、iPhoneとウエアラブルを連携した健康管理手法をテレビコマーシャルで放送している (上の写真、Misfitを水着に着装し運動量を測定している様子、出典はいずれもApple)。

Healthアプリで健康データ管理

iOS 8で「Health」と呼ばれる健康管理アプリが登場。市場には数多くのウエアラブル製品が登場しており、利用者はこれらを使って運動量を測定し、健康管理を行っている。FitBitのようなアクティビティ・モニターで、歩行数や消費カロリー量を計測する。Withingsで血圧を測定し健康管理を行う。しかし、これらの情報はアプリ毎に格納され、それぞれのアプリを起動して断片的に利用しているのが現状である。Healthはこれらデバイスと連携し、情報を一元的に管理するダッシュボードとして機能する。更に、HealthKitという機能を利用すると、病院などの医療機関は、利用者の承認のもと、Healthに格納されている健康データにアクセスできる。患者が測定した健康管理データを利用して、担当医師が効果的な治療を行うことを目指している。

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Healthアプリの機能

HealthはiOS 8に組み込まれているアプリで、上述の通り、健康管理のダッシュボードとして機能する。Healthは、四つの画面から構成される。

「Dashboard」は文字通り健康管理ダッシュボードで、健康に関するデータを統一して表示する。ここには消費カロリー量や睡眠時間など、ウエアラブルや専用機器で計測されたデータが表示される (上の写真左側)。カラムにタッチすると、それぞれの項目の設定画面が表示される (同右側)。

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「Health Data」は計測したデータを七つのカテゴリー別に格納する (上の写真左側)。例えば、「Fitness」のカラムにタッチすると、ボディマス指数 (BMI)、体脂肪率、走行距離、カロリー消費量などを見ることができる。

「Medical ID」は、利用者の個人情報を格納したページで、氏名、既往症、特記事項、アレルギー、服用薬、緊急時の連絡先などが記録される (同右側)。Medical IDが利用者のミニ・カルテとなり、緊急時に医療情報にアクセスできる。

「Sources」はどのデバイスからデータを収集しているかを表示する。更に、どのアプリがデータを参照しているかを示す。どのデバイスでデータを計測し、どのアプリにアクセス権を付与しているかを把握できる。このように、Healthは複数のウエアラブルで収集したデータを一元管理し、統合的に表示する。

病院での治療に活用

AppleはHealthに格納されている健康データを病院から閲覧し、患者の治療に活用するシナリオを示した。Appleは先端医療研究を行っているMayo Clinicと医療システムの開発を行ってきた。同病院は「Mayo Clinic」というアプリを提供しており、患者はこのアプリで健康管理を行う (下の写真左側)。一方、患者はHealthで血圧、体重、運動、食事の管理を行っている。もし血圧が限界値を超えると、Mayo Clinicアプリに警告メッセージが表示される。下の写真右側がその様子で、血圧が「高め」と警告メッセージが表示され、オレンジでシェイドされる。更に、このメッセージが担当医に送信され、適切な処置が施されることとなる。

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この仕組みの背後でHealthKitが使われている。病院が開発したMayo Clinicアプリは、HealthKitが提供するAPIを利用して、Healthアプリの健康データにアクセスする。上の事例では、事前に許可を得て、患者の血圧データを読み込んでいる。このように、病院が患者の健康データにアクセスすることで、健康状態を幅広くモニターし、異常を検知すれば適切な措置を行うことができる。

フィットネスアプリとの連携

HealthKitを使うと、病院以外のアプリとも連携することができる。例えば、Nike+ Rundownアプリは、利用者の健康データを読み込み、エクササイズの効果を判定する。Nike+ Rundownアプリとは、FuelBandなどウエアラブルから、歩行数や走行距離を計測する。Nike+ Rundownアプリが、利用者の許可を得て、睡眠時間、体重、栄養バランスなどの健康データを読み込む。これにより、エクササイズの量と体重の関係を統合的に把握し、運動の効果を検証できる。

iWatchは他社製品と補完関係か

HealthKitが示すように、Appleはウエアラブルや他の計測器と連携し、利用者の健康データを統合的に管理し、更に、第三者アプリからアクセスする仕組みを提供している。Appleがデジタルヘルスに向って大きく舵を切ったことを示している。

Appleはこの秋にも、健康管理モニターiWatchを投入すると言われている。iWatchは多くのセンサーを搭載したファッショナブルな製品と噂され、注目を集めている。iWatchが出荷されると、Healthアプリに連携するウエアラブルとして位置づけられる。今回の発表で、AppleはiWatchだけでなく、他社ウエアラブルを幅広くサポートする姿勢を示している。Appleは、iWatchで他社ウエアラブルを凌駕するのではなく、共棲の道を選ぶとのメッセージとも読める。Appleが健康データのハブとなろうとしているのか、新たなスキームに向って動き始めた。

自転車をスマホから操作 、「コネクティッド・バイク」が目的地までナビゲーション!

July 12th, 2014

ネット接続された自転車「コネクティッド・バイク」が登場した。ライダーはスマホから自転車にアクセスし、ナビゲーション機能などを利用する。Googleは「Android Auto」を発表し、スマホから自動車を操作するコンセプトを提示したが、”Android Bike”とも表現したくなる、クールな自転車が話題を集めている。

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スマホから自転車を操作

これはカナダ・トロントに拠点を置くVanhawksというベンチャー企業が開発した「Valour」という自転車 (上の写真、出典はいずれもVanhawks)。Valourはネットワークに接続され、ナビゲーション機能などを搭載している。ライダーはスマホに専用アプリをダウンロードして、自転車を操作する。スマホが自転車とBluetoothで交信し、ライダーはスマホ画面から各種機能にアクセスする。「Android Auto」が自動車のインターフェイスになるように、ライダーはスマホからValourの機能を利用する。

ナビゲーション機能

ライダーはスマホ・アプリにログインして自転車を使う。ナビゲーション機能を使う時には、スマホ画面で現在地と目的地を入力する。自転車のハンドルにはLEDライトが装着され、ライダーはこの指示に従って、運転していく。

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自転車が交差点に差し掛かると、ハンドルに埋め込まれているLEDライトが曲がる方向に点滅する。左折する際は、左側のライトが点滅する (上の写真)。Uターンする際は、両側のライトが点滅し、直進する際はライトは点滅しない。自転車はGPS受信機を搭載しており、現在地を把握し、アプリのマップと連携し、ナビゲーションを行う。

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自動車の接近を知らせる

自転車は後方の自動車を検知する機能があり、それをライダーに知らせ、危険を回避する。自転車は高周波センサーを二基搭載しており、後方から接近する自動車などを検出する。自動車の接近を検出すると、自転車のハンドル・グリップが振動する。右方向から自動車が接近している場合は右のグリップが振動し、ライダーはそれを把握する (上の写真)。検出範囲は自転車後方3メートルと左右1.2メートル。

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フィットネス情報も分かる

自転車は多くのセンサーを搭載しており、走行に関する幅広い情報を収取する。ライダーはサイクリングを終えた後、アプリで統計情報を見ることができる (上の写真)。アプリが集計する情報は、走行時間、平均速度、走行距離、消費カロリーなどである。これらの情報は自転車に搭載されている速度センサーが、GPSや 加速度計と連携して収集する。ライダーはこれらの情報を把握し、健康管理に役立ていることができる。Valourは、スマホだけでなく、スマートウォッチ「Pebble」とも連携しており、ライダーは運転中にリアルタイムでこれらの情報を見ることができる。

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ネットワークを構成

Vanhawks共同創設者Ali ZahidにValourのシステム構成などについて聞いた。Zahidによると、自転車はライダーのスマホ経由で、クラウドに接続される。自転車が走行中に収集した情報はクラウドに送信され、他のValourライダーはこれらを閲覧できる (上の写真、イメージ)。例えば、自転車は道路に空いた穴やでこぼこ状態を収集し、クラウドに送信する。この情報は他のライダーのスマホに送信され、道路コンディション情報が共有される。Valourは加速度計を搭載しており、道路の状況をセンシングできる。更に、Vanhawksは、これらの情報を活用して、ライダーにでこぼこの無い走り易い道路を推奨する。また、Vanhawksは、バイクレーンが付いた道路を推奨したり、高低差が大きい道路では、う回路を推奨する。自動車のドライバーがソーシャル・マップ「Waze」を使い、道路状況を他のドライバーと共有するが、Vanhawksはこのアイディアを自転車に適用している。

また、Valourは近隣の自転車とメッシュ・ネットワークを構成する。これを利用して、自転車が盗難にあった際は、それを捜索する機能を提供している。他のライダーが盗難車の近くを走行すると、メッシュ・ネットワークでそれを把握し、その場所を持ち主に連絡する仕組みである。Zahidはメッシュ・ネットワークのプロトコールについては、ZigBeeのようなものと説明したが、詳細は公開していないとのこと。

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車体構成など

Valourの車体はカーボン・ファイバーで構成され、軽くて強固な構成となっている (上の写真)。前輪に発電機が搭載され、走りながら充電する。一時間の走行でフルに充電できる。自転車を長期間使わない時はスリープモードに移り、バッテリーを節約する。

Valourはアメリカとカナダで販売が始まっており、価格はシングル・ギア構成で、送料込みで1334カナダ・ドル (約128000円)。Valourはクラウド・ファンディング「Kickstarter」で資金を募り、開発に着手した。Zahidによると、日本からも出資があり、その対価としてValourを日本の消費者に出荷したとしている。

自転車のビッグデータ解析

自動車メーカーは「コネクティッド・カー」の開発を急いでいるが、自転車もネット接続されてきた。Vanhawksは、今後は、ValourのAPIを公開するとしている。開発者はこのAPIを使い、自転車の「Pedal-by-Pedal Playbook (ペダルを一回こぐ毎のデータ)」、自転車の傾き、走行速度などへアクセスできる。これらをビッグデータ解析することで、自転車走行について新たな知見を得ることが可能となる。個人のプライバシーに配慮しながら、健康管理のための有益な情報をマイニングすることが期待されている。また、自転車間だけでなく自動車との通信が可能になれば、ドライバーがライダーの位置をリアルタイムに認識でき、安全性が格段に向上することとなる。コネクティッド・バイクは多くの可能性を秘めている。

アウディにカメラとレーダーを装着すると自動運転車!シリコンバレーのベンチャーが開発

July 3rd, 2014

Googleはシリコンバレーで自動運転車の走行試験を集中的に展開し、製品化に向けて開発ペースを加速している。自動運転技術に注目しているのはGoogleだけではなく、シリコンバーのベンチャー企業がこの市場に乗り出してきた。

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オートパイロット機能を搭載

Cruise Automationというベンチャー企業は、「Cruise RP-1」というオートパイロット・システムを公開した。Cruise RP-1を自動車に取り付けると、自動運転が可能となる。上の写真は、アウディに搭載されたCruise RP-1で、屋根の上にセンサーが装着される。自動運転専用車両を買わなくても、自分の車にCruise RP-1を取り付けると、手軽にオートパイロット機能を使うことができる。

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ドライバーは運転中に、Cruiseボタン (上の写真、座席の隣に着装されている) を押して、オートパイロット・モードをオン・オフする。Cruise RP-1のオートパイロット機能とは、ハイウェー走行において、自動車がレーンの中を、前方の車と安全な車間距離を取って走行する機能である。ドライバーはハンドルから手を離し、アクセルから足を離すことができる。一方、Cruise RP-1は完全自動運転機能ではなく、ドライバーは運転席に座り、前方を見ておく必要がある。Cruise RP-1は、クルーズコントロールの強化版という位置付けで、GMが開発している「Super Cruise」相当製品となる。

Cruise RP-1の利用法

Cruise Automationのオペレーション責任者Daniel Kanに、Cruise RP-1利用法や開発工程などについて聞いた。Kanによると、Cruise RP-1はハイウェーの長距離ドライブで効果を発揮するとしている。高速走行でCruise RP-1が人間に代わり自動車を運転する。また、通勤ラッシュでハイウェーが渋滞している時、Cruise RP-1のオートパイロットを使うと、のろのろ運転の苦痛から解放される。日本での発売予定はまだないとのことであるが、お盆や年末年始の渋滞で威力を発揮するかもしれない。

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システム構成と自動運転の仕組み

Cruise RP-1は、前述の通り、車両に取り付けるオプション機器として販売され、「センサー」、「コンピューター」、「アクチュエーター」から構成される。センサーは自動車の屋根に搭載する (上の写真)。三つの枠から成り、左右はステレオカメラで、中央はレーダー。これらが自動車の眼となり、前方のオブジェクトを認識し、距離を把握する。ここには、IMU (慣性計測装置)、GPS、4G LTEを搭載しており、自動車の動きや位置情報などをモニターし、クラウドと交信する。

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後部トランクには「コンピューター」が搭載され、収集した情報を処理 (上の写真)。車内には「アクチュエーター」が装着され、ハンドル、アクセル、ブレーキを操作。コンピューターが収集した情報を解析し、アクチュエーターに指示を出し、実際に自動車を操作する。Cruise RP-1を購入すると、Cruise Automationがこれらコンポーネントを自動車にインストールする。

詳細マップ開発が商品化のカギを握る

Cruise RP-1を利用するためには、道路の詳細なマップが必要となる。Kanによると、Cruise RP-1が走行できる地域は、現在、カリフォルニア州の主要ハイウェー (101号線と280号線) に限定されているが、他の主要ハイウェー (5号線と80号線) も近々にカバーする予定である。Cruiseは道路を専用車両で走行し詳細マップを作成する。Cruiseはオートパイロットの仕組みを公表していないが、Cruise RP-1は、詳細マップの上にセンサーで捉えたオブジェクトをプロットする構成であると思われる。自動運転技術では、Googleと同様、この詳細マップ整備が重要なタスクとなる。

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Cruise RP-1の対象車種は2012年モデル以降のアウディ・A4及びアウディ・S4である。上の写真はCruise RP-1を搭載したアウディがハイウェーを走行している様子。Cruiseは、消費者から対象車種の意見を募っており、今後、消費者の要望に従って対象車種を広げるとしている。

センサーが手の届く価格に

CEOで共同創設者であるKyle Vogtは、ビデオ・インタビューで、Cruise RP-1開発コンセプトなどを明らかにした。Vogtはカーネギーメロン大学で、自動運転技術の開発に従事し、「Grand Challenge」という自動車レースに参加した。これはDARPA (米国防高等研究計画局) が主催した自動運転技術開発プロジェクトで、民間企業と大学から参加を募り、自動車レースの形で自動運転技術を開発した。

VogtによるとGrand Challengeではセンサーやコンピューターの価格が高額であった。しかし今ではこれら価格が大幅に下がり、消費者向けの製品を開発できるようになった。Cruise RP-1の価格は1万ドルで、出荷は2015年初頭の予定。現在数量を限定してプレオーダを受け付けている。Googleが開発している自動運転車の価格は10万ドルで、その中でレーザー・センサーであるLidarのコストが7万ドルを占めると言われている。Cruiseは汎用センサーを利用してオートパイロットを消費者の手の届く値段で提供することを目指している。

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アメリカ連邦政府が基礎技術を支える

Googleは2009年からスタンフォード大学Sebastian Thrun教授と共同で、自動運転車の開発を開始した。現在ではChris Urmsonが自動運転車開発プロジェクトの責任者である。Urmsonはカーネギーメロン大学でGrand Challengeに参戦している。上の写真は同大学が開発した自動運転車「Boss」で、2007年のUrban Challenge (模擬市街地でのレース) で優勝した。

Vogtも、カーネギーメロン大学で、Urmsonと共に、レースを戦ってきた。アメリカにおける自動運転技術の源流を遡ると、Grand Challengeに辿りつく。つまり、自動運転という業界を一変する技術は、アメリカ政府が基礎研究を下支えし、GoogleやCruiseなどの民間企業が製品化する構図となっている。アメリカ連邦政府が自動運転技術を育ててきたと言っても過言ではない。今後は、Cruise以外のベンチャー企業から自動運転技術が登場することも予想され、シリコンバレーが自動車産業の中心地となり始めた。

Google I/OでクールなAndroid Wearアプリが登場!スマートウォッチの便利さが見えてきた

June 28th, 2014

Googleは、開発者向けイベントGoogle I/Oで、Androidを多角展開することを明らかにした。スマホ向けには「Android L」を発表し、タッチ・インターフェイスが大幅に改良された。自動車向けには「Android Auto」を、テレビ向けには「Android TV」を発表。スマートウォッチ向けには既に「Android Wear」を発表しているが、今回はアプリのデモでその利便性をアピールした。

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Googleが開発しているアプリ

ステージ上でAndroid部門ディレクターDavid SingletonがAndroid Wearについて説明 (上の写真)。Googleは今年3月にAndroid Wearを発表しており、今回はアプリを実演し、ウエアラブル時代のライフスタイルを紹介した。日々の生活でスマートウォッチをどう利用するかが示された。

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朝起きると、まず天気を確認する (上の写真左側、出典はいずれもGoogle)。スマートウォッチはサンフランシスコにいることを把握しており、当地の天気を表示。カードを右にスワイプすると会社までの通勤時間と、道路渋滞情報が表示される (同右側)。スマートウォッチは、利用者の勤務先を把握している。これらは「Google Now」をスマートウォッチに展開したもの。Google Nowは利用者の場所、時間、嗜好などに沿った情報を提示する。これは「Contextual Information」と呼ばれ、スマートウォッチは優秀な秘書のように、利用者が指示しなくても、阿吽の呼吸で必要な情報を提示する。このコンセプトは3月に発表されており、今回はこれをデモで証明した形となった。

パートナー企業からのアプリ

今回のハイライトはパートナー企業が開発したアプリが紹介された点である。これらアプリはスマートウォッチという新しいデバイスをどう活用しているのか、デモを通して紹介された。同時に、ウエアラブルに対する開発コンセプトも読み取れる。

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最初の事例は写真共有アプリ「Pinterest」。Pinterestには綺麗な写真が掲載されており、気になる投稿者をフォローできる。気に入った写真を自分のボードにピン止めすることもできる。Pinterestでピン止めしたレストランの近くに来ると、スマートウォッチに通知が表示される。上の写真左側がその様子で、「Han II Kwan (韓国料理店) のそばにいる」と表示されている。画面をスワイプすると詳細情報にアクセスでき、そこまでの道順が示される (同右側)。興味を持っていたレストランに行くことができる。通知を受信した際、スマホを取り出すより、スマートウォッチを見るほうが便利である。道案内に沿って歩くときも、やはりスマートウォッチのほうが便利だ。

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料理を注文し支払する

「EAT24」はレストランで宅配を注文するアプリ。Singletonはこのアプリを使いスマートウォッチでピザを注文するデモを実施。画面を上方にスワイプして料理の種類を選択する (上の写真左側)。そこでピザ選び、画面を左側にスワイプすると、前回注文したレストランとメニューが表示される (同右側)。この画面にタッチして発注する。次に値段が表示された画面にタッチすると支払いが完了。スマートウォッチで20秒間でピザを注文するというデモはインパクトがあった。オンライン・ショッピングをスマートウォッチで行う時代が到来した。

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音声でタクシーを呼ぶ

音声で操作するアプリも注目を集めた。「Lyft」はタクシー・ネットワークで、利用者はスマホから配車のリクエストをする。これをスマートウォッチで行うデモが実演された。スマートウォッチに「Call me a car」と語りかけタクシーを呼ぶ。スマートウォッチは現在地 (747 Howard St、Google I/O会場) を認識しており、Lyftに配車指示を行う (上の写真左側)。アプリは、「あと3分で到着」と、Lyftからのメッセージを表示 (同右側)。車が到着するとその旨のメッセージが表示される。スマホでは地図上にピンを立て、配車位置を連絡する。スマートウォッチではこの操作はできないため、音声での入力となる。では別の場所に配車を依頼する時は音声で住所を入力するのか、インターフェイスの説明は無かった。日頃「Uber」という類似アプリでタクシーを利用しているが、車が到着するまで、頻繁にスマホを取り出し車の位置を確認する。スマートウォッチなら、腕時計を見るだけですみ、やはり便利。

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スマート家電を操作する

Runtasticは人気のフィットネス・アプリ。ジョギングしている時、スマホに走行距離や走行時間を表示。Runtasticはスマートウォッチ向けアプリを開発しており、利用者はスマホを取り出さなくても、腕のスマートウォッチを見ると、これらの情報が分かる (上の写真)。スポーツなど体を動かしている時は、スマートウォッチのほうが使い易い。

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電機・家電製品メーカーPhilipsは「Philips Hue」というスマート・ライトを販売している。Philips Hueは1600万色を発光し、利用者はスマホからライトをコントロールし、好みの色に設定できる。今度は、スマートウォッチからこれらの操作を行うことができる (上の写真)。ソファーに座って、スマホを取りに行かなくても、腕のスマートウォッチで、室内の色を変えることができる。今後は、テレビや空調などをスマートウォッチで操作するアプリが登場すると思われる。Philips Hueはスマートウォッチがスマートホームのリモコンとなることを示唆している。

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多くのアプリが開発されている

Googleは、上記を含め、60本のアプリがAndroid Wear向けに開発されていることを明らかにした (上の写真)。このリストを見るとスマートウォッチ利用形態のトレンドが見えてくる。「Delta」はデルタ航空のアプリで、スマートウォッチでフライト情報を確認し、QRコードの搭乗券を表示し、そのまま搭乗できる。搭乗ゲートでポケットからスマホを取り出す必要が無くなる。「LevelUp」はカード支払いアプリで、店舗で買い物をした際に、クレジットカードを出さなくても、スマートウォッチで支払いができる。「Mint」は家計簿アプリで、スマートウォッチで銀行口座残高を照会できる。市場はモバイル・バンキングからウエアラブル・バンキングに向っている。「Salesforce」などの名前もあり、スマートウォッチが仕事のシーンで活用されることになる。既に「Bring Your Own Wearable (BYOW)」という造語も登場しており、BYODの次の流れを示している。

これらスマートウォッチ向けアプリは、利用者がダウンロードする必要はない。スマホ向けアプリをダウンロードすると、自動的に、スマートウォッチ向けアプリもダウンロードされる。スマホ・アプリが更新されると、スマートウォッチ・アプリも自動でアップデートされる。

Android Wear成功のカギは

上述の通り、Googleが提供するアプリは、Google Nowをスマートウォッチに焼直したものである。利用者のコンテキストを把握し、利用者が欲していると思われる情報をプッシュする。それに対して、パートナー企業が開発しているアプリは、スマートウォッチという形状に最適な使い方を目指している。今回の発表でその外郭が見え、スマートウォッチ活用法が形となってきた。スマートウォッチが単にスマホのセカンドスクリーンであるなら、その利用価値は限定的である。Android Wearが成功するためには、腕時計という形状を生かしたクールなアプリの登場が鍵を握る。Googleとパートナー企業からのイノベーションに期待が寄せられている。

街中でレストランを見れば評価がわかる!Google Glassがリアルとデジタルを橋渡し

June 22nd, 2014

拡張現実 (AR) 技術で市場をリードしているBlipparはGoogle Glass向けアプリ開発に重心を移している。Blipparは今月、「Glass Vision」として、Google GlassとARが結びつくことで、日々の生活が飛躍的に便利になるというビジョンを発表した。ここにはGoogle Glassでの新しいライフスタイルが描かれている。

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Google Glass向けAR開発

BlipparはLondonやSan Franciscoなどに拠点を置くベンチャー企業で、イメージ認識使ったデジタル広告技術を開発している。スマホでBlipparアプリを起動し、商品や雑誌を読むと、その上にマルチメディア・コンテンツが表示される。これがAR機能で、人目を引く広告方式として、市場で幅広く使われている。いまBlipparは、これをGoogle Glassに応用する取り組みを始めた。Glass Visionでは、Google GlassとARが結びつくことで、日々の生活が如何にインタラクティブになるかを示している。

手のひらがキーボード

Google GlassでBlipparを起動し、手のひらを見ると、そこがキーボードとなる (上の写真)。キーボード下段にはTwitter、Facebook、SMS、Saveのアイコンが並び、これらにタッチして利用する。キーボード上段には+アイコンが並び、これらにタッチすると、写真や情報をそのままFacebookなどに掲載できる。中段は着信メッセージで、アイコンにタッチしてメールを読む。ARを使うとGoogle Glassをキーボードで操作できる。

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Google Glassで時計を見ると、その周りに他国の時間が表示される (上の写真)。いまLondonにいて、腕時計は11:44 amを指している。この周りに時計アイコンが表示され、東京は2:44 pmであることが分かる。また今日の日付は10月21日。

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レストランの前で評価を読む

Google Glassでレストランを見るとディスプレイに店舗情報が表示される。上の写真がその事例で、通りから店舗を見ると、ここは「Tuttons」というイタリア料理店で、評価は四つ星で、美味しいが高い、ということが分かる。店内の様子や料理の写真も掲載されている。店の前でこれらの情報を読み、入るかどうかを決めることができる。勿論、スマホでアプリを起動し、「Tuttons」と入力すれば、同じ情報を読むことができる。しかし、Blipparを使うと、何も入力することなく、目の前にこれらが表示され、格段に便利である。

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商品を見ると値段が分かる

Blipparは買い物するのに便利なアプリである。ウインドウ・ショッピングをしていて、気になるスニーカーを見つけた。Google Glassで商品を見ると関連情報が表示される (上の写真)。この商品の価格はAmazonが31.99ドルで、Asos  (英国のオンラインストアー) は29.99ドルと表示されている。つまりこの店で買うより、Asosで買う方が安いことが分かる。+アイコンを押すとそのまま購入できる。また関連商品も表示される。

利用者は店舗で販売されているスニーカーでも、駐輪場に置かれている自転車でも、Google Glassで見れば、価格や商品情報が分かる。Amazon Fire Phoneのカメラで品物を読み込むと、Amazonで購入できるのと同じ原理である。しかし、Google Glassでは対象物を見るだけで処理が完了し、スマホを取り出してかざす必要はない。消費者にとってGoogle Glassは究極のショッピング・マシンとなり、買い物のコンセプトが根底から変わる。一方、小売店舗としては、商品は常にオンライン・ストアーと値段が比較され、今以上に、Showrooming (実物を店舗で見て買い物はオンラインで行う方式) が進行する。

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これは不動産物件を探している時にも利用できる。Google Glassで気に入った物件を見ると、その不動産情報が表示される (上の写真)。このケースでは物件価格は250万ポンドと表示され、建物内部の写真も掲載されている。アイコンにタッチすると間取りや詳細情報が表示される。

AR搭載の美術館ガイド

Google Glass向けAR機能はBlippar以外の企業も注目している。GuidiGOはNew YorkとParisに拠点を置くベンチャー企業で、スマホ向けに観光案内アプリを開発している。GuidiGOは今月、Google Glass向けアプリ「GuidiGO for Glass」を発表。これは美術館ガイドで、Google Glassをかけて絵画の前に立つと、アプリは作品を認識し、作品案内を音声と写真で行う。

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具体的には、利用者は作品の前に立ち、Google Glassで作品イメージを読み込む (上の写真)。アプリは画像認識機能を使って、この絵画はVincent Van Gogh作「Harvest in Provence」であると認識し、この作品についての解説を音声で行い、画像をGoogle Glassに表示する。利用者は作品解説をマルチメディアで楽しめるほか、作品番号などを入力する必要はない。このアプリはルーブル美術館などで絵画鑑賞ツールとして実証実験が始まっている。長い紐で音声ガイドを首に吊るし、片耳にヘッドセットを装着する、古風な方式から解放される日も近い。

AR市場で統合が始まる

Blipparは先週、AR老舗企業Layarを買収した。BlipparとLayarが統合することで世界最大規模のAR開発会社が誕生する。この買収により、両社の資源が統合され、消費者向けのAR技術開発が加速することとなる。Blipparは、前述の通り、Google Glass向けARに注力しており、グラスアプリ開発が本格始動する。

同社 CEOで共同創設者のAmbarish Mitraは、ARをGoogle Glass向けに展開する理由を次のように述べている。ウエアラブル市場でGoogle Glassの位置づけは 「ビジュアル層」で、素早く情報にアクセスできるのが特徴である。Blipparは、利用者が特別な操作をすることなく、必要な情報にアクセスできる方式を目指している。Mitraの発言を代表する事例は上述のレストランで、Google Glassで見るだけで、その店の評価が分かる。インターネット上には膨大な情報が集約されているが、Google GlassとARがこれをリアル社会にマッピングする役割を担っている。