デジタルカメラは消えつつあるがアクション・カメラは人気爆発

April 5th, 2014

デジタルカメラはスマートフォンに押されて、市場から姿を消しつつある。一方、アクションカメラ「GoPro」は、若者層を中心に絶大な人気がある。GoProの将来性は高く評価され、近く株式を公開する予定である。GoProは体に装着して利用するカメラで、ウエアラブル・カメラとも言われている。スマートフォン全盛時代に何故ウエアラブル・カメラは好調なのか、その秘密に迫る。

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誰でもプロになれるカメラ

GoProはシリコンバレーを拠点に、アクション・カメラを開発するベンチャー企業。カメラはスポーツなどのアクションを撮影する目的で利用され、専用ケースに入れて使用する。カメラにはファインダーは無く、身体や用具に装着し、シャッター・ボタンを押してビデオ撮影を開始する。再びボタンを押して撮影を終える。上の写真 (出典はいずれもGoPro) はGoProをサーフボード先端に固定し、波の壁を下っているシーンを撮影したものである。元々マリンスポーツを撮影するために開発され、GoProで撮ると誰でもプロ選手に見えることからこの名前が付いた。

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GoProはシンプルなカメラ

本格的なアクション・シーンの撮影ができるGoProであるが、その構造はシンプルである。GoPro最新モデルは「HERO3+」で、前モデルを小型軽量化している。上の写真はHERO3+のハイエンド・モデル (Black Edition)。ビデオ撮影では1080p60などのモードに対応している。写真撮影もでき、解像度は12メガ・ピクセルで、一秒間に30フレームのバースト機能がある。GoProを手動で操作する他に、Wi-Fi Remote (上の写真左側) を使って遠隔操作できる。

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GoProはカメラ・マウント装置を多数取り揃えている。上の写真は胸部とヘルメットにカメラを装着し、スキー滑降を撮影している様子である。スキーのポールにカメラをマウントし、自分撮りをすることもできる。この他に、自動車、オートバイ、ボートなどにマウントする装置を販売している。シリコンバレーでは、自転車通勤者の数多くがヘルメットにGoProをマウントしており、ロードバイク必須のアイテムとなっている。

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GoProビデオ専用チャンネル

利用者はGoProで撮影したビデオをYouTubeなどに公開し、アクションを通じて自己主張を行う。視聴者は息をのむビデオを楽しんでいる。GoProはYouTubeに専用チャンネルを設け、幅広い分野のビデオを公開している。ここには一般利用者が撮影したビデオだけでなく、提携しているアスリートや企業が撮影した、高品質のビデオが掲載されている。上の写真はその一例で、Bombsquadというスタント・チームが、断崖からベースジャンプした様子を、ヘルメットに装着したGoProで撮影したものである。パラシュートが開く前のダイビングで、鳥のように滑空しているところを捉えている。プロが撮影したビデオは、圧倒的な迫力で見る者に迫って来る。

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GoProで撮影されたビデオはスリリングなものだけではなく、海中を泳ぐ優雅なシーンも捉えている。(上の写真) これはPerformance Freedivingというフリーダイビング運営会社が撮影したもので、インストラクターがトンガの海で素潜りをしている様子である。深くダイブしてクジラに遭遇するシーンも記録されている。これらのシーンは同僚が装着しているGoProで撮影した。これがGoProチャンネルの一番人気のビデオで三千万回閲覧されている。

GoProは映画配信サイト

YouTubeに開設しているGoProチャンネルには、1700本近いビデオが公開されている。アマチュア・ビデオを綺麗に編集したものから、提携しているプロのアクションを撮影したものまで、多彩なコンテンツが揃っている。ジャンルごとに整理されたビデオ・ライブラリーとなっており、アクション映画として十分に楽しめる。Netflixで映画を楽しむように、GoProは映画配信サイトとして機能している。Netflixは有償であるが、GoProは無償でコマーシャルが入った映画を楽しむ構成となっている。

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コンテンツを航空会社に配給

GoProはアクション・ビデオをサイトに掲載するだけでなく、Virgin America航空へ提供している。同航空は機内エンターテイメントで、テレビ番組や映画に加え、GoProアクション・ビデオを放送している。乗客は機上でもGoPro放送を楽しむことができる。またGoProはこれらビデオをMicrosoft Xbox 360とXbox One向けに配信すると発表した。これによりXbox Live GoldメンバーはGoProアクション・ビデオをゲーム機で楽しむことができる。(上の写真) 利用者は家庭のテレビでアクション・ビデオを楽しむことができる。

GoProはコンテンツ企業

GoProはウェブサイトに高品質アクション・ビデオを公開し、映画ストリーミング事業を展開しいる。同時に、製作したコンテンツは航空会社に配信し、今後はXbox利用者にストリーミングする。GoProはカメラ・メーカーではなく、事業の中心は映画プロダクションである。GoProカメラは簡単に真似できるが、ユニークなアングルで撮影されたコンテンツで事業を展開するにはノウハウがいる。創設者でCEOのNicholas Woodmanは、GoProは「コンテンツ企業」であると述べている。更に、Woodmanは、GoProカメラは事業推進のための「Enabler (支える道具)」であるとも発言している。

高度な技術を有す日本の光学機器企業がスマートフォンに押されデジタルカメラ事業を縮小しているのとは対照的に、GoProはシンプルなカメラで急成長している。GoProでは、ウエアラブル・カメラを基盤とする独自事業が成長の原動力となっている。いま多くのウエアラブル製品が登場しようとしているが、成功の鍵はハードウェア基盤上のビジネスであることをGoProが示している。高度技術をEnablerとし、如何に魅力的な事業を構築できるか、日本企業の実力が問われている。

Facebookだけじゃない、IntelもMicrosoftもウエアラブルに向う

April 1st, 2014

Facebookは、3月25日、バーチャル・リアリティ (VR) ヘッドセット開発企業Oculus VRの買収を発表した。Intelは、同日、腕時計型ヘルス・トラッカー開発企業Basis Scienceを買収すると発表。これに先立ちMicrosoftは、ウエアラブル開発企業Osterhout Design Groupからスマートグラス関連技術を買収した。大手IT企業はウエアラブル開発に向って舵を切った。

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Intelはヘルス・トラッカー企業を買収

Intelが買収したBasis Scienceは、サンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業で、「Basis」ブランドで腕時計型ヘルス・トラッカー (上の写真) を開発している。この市場ではJawboneやFitbitが有名であるが、Basisは四種類のセンサーを搭載し、身体データを多角的に解析できるのが特徴である。

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Basisはスマートウォッチのように腕にはめて利用する。上の写真は心拍数 (86) を表示している様子である。デバイス背面に搭載されているセンサーで血流を測定し心拍数を算定する。会社で仕事中に心拍数が高い時はストレス・レベルも高く、呼吸法などでリラックスする必要がある。利用者は心拍数からストレス・レベルを把握し、健康管理に役立てる。

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上の写真は利用者のアクティビティを表示している。ディスプレイに、30分23秒ウォーキングして328カロリー消費、と表示されている。加速度計が歩行数を測定し、専用ソフトウェアBody IQがデータ解析を行い、アクティビティの種類を識別する。ここではウォーキングであると認識している。他に、ランニング、サイクリング、睡眠などを把握する。

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クラウドで活動状態を管理

収集したデータはパソコン経由でクラウドにアップロードする。上の写真はアップロードしたデータを閲覧している様子で、活動の詳細がグラフで表示されている。ここには10月25日午前中の身体情報と活動情報が表示されている。身体情報は心拍数、消費カロリー量、発汗量が表示されている。体表面温度を見ることもできる。活動情報はアクティビティの種類を、ウォーキングやランニングのアイコンで示している。また睡眠を解析する機能もあり、睡眠時間や睡眠状態を時間軸に表示する。睡眠の状態はDeep、Light、REMで表示され、利用者は良く眠れているのか、睡眠の質を把握できる。

ウエアラブル開発環境を提供

Intelはニュース・リリースで買収の目的について述べている。Intelはウエアラブル製品を製造販売する訳ではなく、開発企業向けにその環境を提供する。具体的には、「ウエアラブル参照モデル」を開発し、半導体ではワンチップ・コンピューターである「SoC」を開発する。更に、開発者向けに「プラットフォーム」を提供する。開発企業はIntelが提供するSoCやプラットフォームを利用して、ウエアラブル製品開発を加速できる。Intelはウエアラブル開発環境を提供し、ここにBasis Scienceの技術と人材が活用される。Intelはパソコンからモバイルへの移行が遅れ苦戦しているが、ウエアラブルでは迅速な対応をみせている。

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Microsoftはスマートグラスに向う

Microsoftは水面下でウエアラブル技術開発を進めている。MicrosoftはOsterhout Design Groupからスマートグラス (上の写真) に関連する知的財産権を買収した。今月、TechCrunchが報道した。Osterhout Design Groupはサンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業で、アメリカ軍や政府機関向けにウエアラブル装置を開発してきた。買収の対象は拡張現実 (AR) 技術やメガネ型ウエラブル技術で、昨年11月に合意が成立している。但し、Microsoft及びOsterhout Design Groupは、この買収について公表していない。

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スマートグラスの概要

Osterhout Design Groupは開発している技術について公開していないが、メガネ型ウエアラブルの特許を申請している。申請書類によると、この技術を「頭部に着装するインタラクティブ・メガネ」と定義している。上のダイアグラムがその構造で、メガネ・フレームに発光装置(ダイアグラムの122)が搭載され、プロジェクター(108)を通して、レンズ(104)に投影する構造となっている。レンズは透明で、前の景色が見える構成である。イヤフォン(120)を備え、無線通信機構(118)を搭載している。プロセッサーはTI OMAP4(112)。フレーム上部がアンテナ(110)となっている。このデバイスの主な用途はAR機能で、透明なレンズに付加情報を表示する。Google GlassでARアプリLayarを使うイメージである。但し、デバイスは軍事ミッションを意識して設計されており、AR技術を顔認識や光彩認識に適用し、戦場でテロリストを特定する利用法などが想定されている。

Microsoftは買収した技術を何に使うか公表していないが、Google Glassに対抗して、Microsoft独自のスマートグラスを開発するモデルも考えられる。又は、スマートグラスをMicrosoft Xboxと連携して、ゲーム端末として利用するオプションもある。Microsoftは水面下でウエアラブル技術開発を加速させている。

主要企業はウエアラブルに向う

FacebookはOculus VRの買収を発表し、市場を驚かせた。ソーシャル・ネットワークとウエアラブルはどう関係するのか、Mark Zuckerbergは長期的ビジョンとして、VRを使ったコミュニケーションが一般化すると述べている。GoogleはGoogle GlassやAndroid Wearでウエアラブル開発で先行している。AppleからはiWatchが噂され、FacebookもOculus VRでこの流れに乗る形となった。主要IT企業のベクトルがウエアラブルに向い始めた。

アンドロイド搭載スマートウォッチMotorola 「Moto 360」はファッション性をアピール

March 26th, 2014

Googleは2014年3月18日、ウエアラブル向け基本ソフトである「Android Wear」を発表した。Motorola Mobilityは同時に、これを搭載したスマートウィッチ「Moto 360」を発表した。(下の写真) Moto 360は典型的な腕時計の形状をしているのが特徴で、ハイテクよりファッションを意識した製品である。スマートウォッチのこの手法は消費者の心を掴むことができるのか、そのインターフェイスを検証する。

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円形のディスプレイ

Motorolaデザイン責任者Jim Wicksは、Google Hangoutsを使った記者会見で、Moto 360の開発コンセプトについて解説した。Moto 360はAndroid Wearを搭載した最初のスマートウォッチで、ディスプレイが円形で高級感あるデザインとなっている。Wicksによると、Moto 360のディスプレイを円形にしたのは、伝統的な腕時計を表現するためである。腕時計は100年の歴史があり、ずっと円形であった。現在販売されている腕時計の80%は円形で、この形状が腕にしっくりするためである。WicksはMoto 360をデザインする際に「ファッション・テスト」という言葉が鍵になると説明した。Moto 360は利用者からお洒落について及第点をもらうことが必須要件で、スマートウォッチは機能性と共に、ファッション性が事業成功のカギを握る。

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Google Nowを中心とした機能

Moto 360は時計とGoogle Nowを融合させた構造となっている。Google NowはApple Siriに対抗する機能で、音声で操作し、必要な時に最適な情報を表示する。上の写真はMoto 360に時間と天気を表示している。これはGoogle Nowの気象情報で、デバイスは現在地を把握し、場所に特化した情報を表示する。また、Google Nowのカレンダー機能で、一日のスケジュールを管理できる。

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サイクリングをしている時はMoto 360が道案内をする。「50フィート先を右折してWashington Streetに入る」と道順を表示する。(上の写真) また、Hangoutsを使うとメッセージを送受信できる。Moto 360の表示フォーマットは簡潔で、利用者は一見して情報を把握できる。Wicksはこの方式を「Glanceable (チラ見できる)」と呼んでいる。この「チラ見」がAndroid Wearの標準インターフェイスとなる。

スマートウォッチの次は

Moto 360は情報を表示する目的で使用されるため、カメラは搭載していない。給電のためのUSBポートもない。概観は腕時計で、電子機器固有のパーツは見えない。MotorolaはMoto 360のハードウェア仕様を公開しておらず、ディスプレイの解像度、センサーの種類、バッテリーの寿命などは不明である。製品出荷は今年夏からで、アメリカを最初に世界に展開する。Wicksは製品ロードマップについても触れた。今回はAndroid Wear搭載スマートウォッチを開発したが、今後は他のウエアラブルに展開していくと述べた。詳細は明らかにしていないが、スマートウォッチの次はスマートグラスなのか、Motorolaがウエアラブル製品に重心を移している。

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LG G Watchは四角なインターフェイス

LGもこの発表に合わせて、Android Wear搭載のスマートウォッチ「G Watch」を発表した。(上の写真) G Watchはディスプレイが四角形で、従来型スマートウォッチのデザインを踏襲している。LGも製品仕様は公開していないが、Google Nowを中心に機能を実装している。製品出荷は今年第二四半期で、価格については公表していない。LGはスマートウォッチ開発でGoogleと密接にプロジェクトを進めており、G WatchはGoogleの意向を反映した製品となっている。LGはスマートフォンやタブレットにおいても、Googleと密接に製品開発を行い、Nexus 4、 Nexus 5、LG G Pad 8.3 Google Play Editionとして商品化している。これらは「純正製品」でAndroidのあるべき姿を示している。

Samsungは二系統で開発

Googleはデバイス製造パートナーとして、MotorolaとLGの他に、Asus、HTC、及びSamsungを挙げている。Samsungは、パートナーに名前は連ねているが、製品発表は行っていない。Samsungは既に独自スマートウォッチ「Galaxy Gear 2」を発表している。Gear 2の基本ソフトにTizenを採用しており、Googleと袂を分かつ形となっている。今後Samsungは、スマートウォッチでTizenとAndroid Wearの二系統で開発を続けるのか、その先行きが不透明である。

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ファッション性をアピール

Android WearパートナーでFossil Groupの名前が目に留まる。Fossilは時計 (上の写真) や宝飾品を販売する企業で、ファッション・ブランドがAndroid Wearを搭載したスマートウォッチを発売することとなる。Moto 360と同様に、お洒落なスマートウォッチを開発するという路線となる。腕時計を熟知している企業が開発するスマートウォッチはどんなデザインなのか、パートナーの中で一番気になる製品である。GoogleはGoogle Glassでもメガネ最大手Luxottica Group (傘下にRay BanやOakleyブランドを持つ) との提携を発表し、一流ブランドのデザインや販路を取り入れる。スマートグラスやスマートウォッチは「デザイン・テスト」に重心を移しつつあり、機能性に加えファッション面で、消費者に訴求している。

スマホの次はウエアラブルを席巻する、Googleが「Android Wear」に託したメッセージ

March 20th, 2014

Googleは2014年3月18日、ウエアラブル向け基本ソフト「Android Wear」を発表した。これは現行Androidをウエアラブル向けに拡張したもので、まずスマートウォッチに搭載される。デバイス・メーカーはAndroid Wearを搭載したスマートウォッチを発表した。Motorolaが「Moto 360」を、LGが「G Watch」を公開した。(詳細は次回の記事でレポート。) Android Wearとは何か、どういうシーンで利用されるのかを分析し、Googleのウエアラブル戦略を読み解く。

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小さなディスプレイに簡潔に表示

Android Wearはスマートウォッチの小さなディスプレイ向けに最適化された基本ソフトで、情報を簡潔に表示する。上の写真 (出典は断りが無い限りGoogle) はその事例で、左側画面は今いる場所の天気で、一瞬見ただけで把握できる。また、スマートウォッチを音声で操作できる。「Café Robinを7pmで予約」と言えば、そのままレストランの予約ができる (右側画面)。

GoogleはAndroid Wearを搭載したスマートウォッチが、日常生活で如何に役立つかを、ビデオにまとめて公開した。このビデオは「Information that moves with you」というタイトルで、スマートウォッチで生活すると、必要な情報が常に身近にある、というメッセージを発信している。

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パーティ会場まであと何駅?

上の写真はパーティ会場にバスで向かう途中である。スマートウォッチは、降車駅である「Jackson St.まであと四駅で9分で到着」と教えてくれる。ケーキを抱えているので、スマホには手が届かない。Googleは背景技術について公表していないが、これはGoogle MapsのTransit機能を使っていると思われる。そうしているとStephanie Blockからスマートウォッチにメッセージが入り、「もう近くまで来た?」と尋ねた。これに対して「Reply」と音声でコマンドを発し、「あと二分で到着」と語り返信した。ここではGoogleのメッセージング Hangoutsを使っている。

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危険、海にはクラゲが出ている

上の写真はサーフィンをするため海岸に到着したところである。しかし、スマートウォッチに「危険、クラゲが発生しているため海に入らないこと」とメッセージが表示された。画面を左にスワイプすると近くの海水浴場のリストが表示され、一行は一番近いZuma Beachに行くこととした。ここではGoogle Nowで、現在地に特化した情報を表示している。

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飛行場では搭乗券になる

今日はロスアンジェルスからニューヨークに出張する。時間ぎりぎりで、飛行場の搭乗ゲートに走って向かう。スマートウォッチは「52カロリー消費」と運動量を表示した。画面を上方向にスワイプすると、搭乗するフライト予定が表示される。「LAXからJFK、12:55pm発、Gate 72」と表示された (上の写真)。その画面を左にスワイプすると搭乗券がQRコードで示され、リーダにかざし搭乗する。ハンドバッグからスマホを取り出す必要はない。これもGoogle Nowを使い、フライト情報を表示している。画面を上方向にスワイプしページを送る。左方向にスワイプするとアクションを取るページが表示される。

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応援しているチームは勝った?

お父さんが子供をお風呂に入れている時、友人のDane Shapiroから「信じられない試合!」というメッセージを受信した。お父さんはスマートウォッチで、「Ok Google, what’s Syracuse’s score?」とシラキュースの得点を音声で尋ねる。スマートウォッチはバスケットボールの試合結果を「Syracuse:28、Virginia:27」と表示した (上の写真)。ここではGoogle音声検索を利用している。スマホと同様に「Ok Google」で検索エンジンが起動する。Googleはお父さんがシラキュース大学バスケットチーム「Syracuse Orange」のファンであることを認識しており、その結果を表示した。手がぬれていて、スマホを操作できない時は、スマートウォッチが便利である。

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いま踊っている?

長い行列で女性二人が順番を待っている。女性は待ちくたびれて、ホールに流れている音楽に合わせて踊り始めた。スマートウォッチは「いま踊っている? この音楽の題名を探す」と申し出た。その結果、この音楽は「ChromeoのJealous」と表示した(上の写真)。ここではActivity Recognitionという機能を使ってダンスしているのを検知した。これはAndroidに実装された機能で、利用者の動きから、自動車・自転車に乗っている状態、また、歩いたり、走ったり、止まっている状態を検知する。音楽を言い当てるのはGoogleの音声検索を使っている。

Google Nowが基本ソフトの中心

Android Wearは、上述の利用シーンから分かるように、Google Nowを前面に押し出している。利用者は音声で操作し、デバイスは利用者の嗜好や今いる場所に最適な情報を配信する。Google NowはApple Siriの対抗馬として位置づけられ、賢い秘書の役割を担っている。Android Wearを搭載したスマートウォッチは、Google Nowマシンと位置づけられる。

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Google Glassからの影響

Android Wearのユーザ・インターフェイスは、Google Glassから大きな影響を受けている。Google Glassのカードをスマートウォッチ向けに最適化している。上の写真はGoogle Glassでフライト情報を表示している様子で、写真右上のカードにフライト情報が表示されている。上述「飛行場では航空券になる」の章では、スマートウォッチに表示されたライト情報は上の写真とほぼ同じである。スマートウォッチではカード形状が正方形であるが、表示内容は同一である。

一方、ページ送りについては両者で操作が異なる。Google Glassでは前後にスワイプしてページ送りをし、タップしてアクションを取る。スマートウォッチでは上下にページ送りをし、左方向にスワイプしてアクションを取る。表示単位はカード形式で同じであるが、その操作はデバイスの形状に応じて定義されている。

スマートウォッチの次は

Android Wearはウエアラブルに搭載する基本ソフトで、その第一弾がスマートウォッチである。Googleはそれ以後のロードマップを公表していないが、今後はスマートグラスやリストバンドなどのデバイスが対象になと思われる。スマートグラスではGoogle Glassのトライアルが始まっており、Android Wearとしてプラットフォームが公開されるかがポイントとなる。

Googleはスマホやタブレット向けにAndroidを無償で提供することで、Apple iPhoneのシェアを奪い、大成功を収めている。GoogleはウエアラブルにおいてAndroid Wearで同じシナリオを描いている。スマホではiPhoneというお手本があったが、今回はGoogleが主導する形となる。消費者をウエアラブルに引きつけることができるのか、Android二楽章が始まった。

アメリカはウエアラブルの実験場、Google Glassでビジネスを構築するアイディアが満載

March 14th, 2014

【Google Glass完全ガイド:アイディア編】

メガネ型ウエアラブルとして登場したGoogle Glassを、どう活用すべきなのか、多くの企業や個人がキラーアプリを模索している。このレポートで最新のGoogle Glass活用法をコラージュ風に分析する。ここにはGoogle Glassで事業展開するためのヒントが詰まっている。

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居眠り運転防止アプリ

新興企業から、Google Glassで居眠り運転を防止するアプリが登場した。これは「DriveSafe」と言う名称で、アプリが運転中にドライバーの居眠りを検知すると、音声で警告メッセージを出し、注意を喚起する。これはディスプレイにも表示され (上の写真)、カードをタップすると、休憩所までの道順が示される。アプリはグラスの赤外線カメラと傾きセンサーでドライバーの状態をモニターする。居眠りの前兆を検知すると、警告を発する。グラスを居眠り検知センサーとして利用するアイディアだ。そもそも運転中にGoogle Glassを使用できるのか、まだ公式見解は出ていない。カリフォルニア州サンディエゴで行われていた交通裁判では、Google Glassをかけて運転した女性に対し、無罪の判決が下された。運転中にGoogle Glassディスプレイがオンであったことを証明できない、という理由からである。ではディスプレイがオンであったらどうだったのか、グラスに対する安全評価は続いている。

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あの人と同じ洋服が欲しい

街で素敵なファッションに出うと、その人をGoogle Glassで写真撮影すると (上の写真)、同じ洋服を買うことができる。これはFashion Discovery Labsという新興企業が開発した技術で、グラスは被写体が着ている衣服を認識し、利用者はそれをそのまま購入できる。気になるファッションに出会ったら、音声でアプリを起動し撮影すると、グラスは衣服のブランドや商品名をカードに表示する。

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上の写真がその様子で、女性が着ている服は、「Circus by Sam Edelman」というブランドの「Colorblock Faux Leather Moto Jacket」で、価格は128ドルであることが分かる。アプリはその衣服に近いイメージの商品も紹介する。商品が気に入ればグラス上で購入できる。グラスで撮影する時には、相手の許可を得ることが必須である。知らない相手に声をかけるのは勇気がいるが、それ以上に知りたい気持ちが上回るのかもしれない。

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匠の技を伝承する

Google Glassで著名ヘアスタイリストの技を録画し、新人教育に活用する取り組みが登場した。これはL’Oreal USAの子会社が始めたもので、「Matrix Glass for Class」という教育プログラムである。サロンプロを目指す生徒に、スキルを指導するものである。教材はGoogle Glassを使って撮影され、教師視線でテクニックが解説される。撮影されたビデオはオンラインに掲載され、生徒はこれを見て学習する。同時に、このプログラムは製品プロモーションとしても利用されている。著名ヘアスタイリストの技を家庭でも実践できるというシナリオである(上の写真)。グラス視線で撮影したビデオは、技法を伝えるには最適のメディアである。この方式は、ヘアスタイリスト以外に、大学病院や製造現場などで幅広く使われ始めた。熟練技術者が定年退職する前に、匠の技をGoogle Glassで撮影し、次世代に伝えることもできる。

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学校教育で仮想社会見学を取りれる

Apple iPadが登場した時、教育関係者は一斉に、タブレットを学校教育に取り入れる方策を模索した。いま同じ取り組みがGoogle Glassで起こっている。その代表が「Virtual Field Trip」という手法で、教室の生徒たちが仮想で社会見学するものである。先生がGoogle Glassをかけて街に出る。上の写真は、先生がスイスCERNを訪問し、大型ハドロン衝突型加速器をGoogle Glassで撮影し、その映像を教室 (写真右上隅) に中継しているところである。先生が加速器の仕組みを説明し、生徒たちはパソコンでその映像を見る。通信システムはGoogle Hangoutで、Google Glassとテレビ会議ができる。生徒の質問に現場にいる先生が答え、仮想の社会見学を行っている。この先生はグラス中継だけでなく、Google Glassで教材を開発し、サイトに公開している。対象分野は、物理、生物、テクノロジー、数学で、日常生活で出会う現象をグラスで撮影し、難しい論理を実例を交え、分かり易く教えている。

ウエアラブルの実験場

Googleはグラスを発表した当初から、メガネ型ウエアラブルに特有な使い方を公開してきた。市場では企業や個人が、Google Glassを活用するための、様々な利用法を公開している。スマートグラスならではの活用法を探求している。アメリカ全体が巨大な実験場となり、Google Glassのベスト・プラクティスが模索されている。今はまさにスマートグラスの黎明期で、これらトライアルの多くがプロトタイプで、製品として出荷されているものは数少ない。素晴らしいアイディアから首を傾げたくなるものまで多彩で、ウエアラブルでビジネスを構築するためのアイディアが見え隠れしている。